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黒潮に渦巻く記憶の反響──私たちが歌い継ぐ島々の声いよいよ12月、音楽詩劇研究所主催(国際交流基金 2024年度舞台芸術国際共同制作事業)「黒潮プロジェクト 台湾─与那国─済州」が開催されます。
日韓の作曲家が日本・韓国・台湾の伝統音楽奏者など、故郷の文化と対峙するアーティストと対話を重ねながら、コラボレーション作品を織り上げます。台湾、日本最西端の与那国島、韓国の済州島、世界史の十字路と呼ばれる黒潮流域の島々と、ディアスポラという共通するテーマで描く、音楽劇二作品の世界初演にご期待ください。
【日程】*詳細下部
沖縄公演(てんぶす那覇 テンブスホール)
12月7日(土) 8日(日)
東京公演 (日暮里サニーホール)
12月10日(火) 11日(水)
【内容】
◎ 第一部:『そして魂と踊れ』(約40分)
演出・作曲:チョン・ウォンキ
◎ 第二部:ユーラシアンオペラ Op.4『黒潮の子』(約90分)
演出・作曲:河崎純(音楽詩劇研究所)
第一部は、韓国の済州島の巫俗からインスピレーションを得た、現代の儀式でありレクイエムでもある作品。黒潮に渦巻く生と死、魂が国境を越え、今、ここにいる私たちに語りかけます。
第二部『黒潮の子』は、音楽詩劇研究所によるユーラシアンオペラの新作です。2016年よりロシア、ウクライナ、トルコ、カザフスタン 、韓国、日本で各地のアーチストとともにダイナミックな「陸の道」をテーマに作品を展開してきたユーラシアンオペラが、創作の眼差しをはじめて海に向けます。
第一部と第二部は、関連し合いながら「黒潮プロジェクト」として、混迷する排他的な世界に向けて新たなビジョンを投げかけます。
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【新作ユーラシアンオペラ 『黒潮の子』】
『黒潮の子』は海域に浮かぶ島々【台湾・与那国・済州】を、女性(SHIO)が巡る旅。SHIOを演じるのは、与那国島出身の俳優・映画監督の東盛あいか。映画、与那国語ラップと多方面に異才を放つ、東盛の舞台作品デビューになります。
―私は誰?
―私はどこから来た?
―私はどこに行くの?
名も知られぬ土地から始まるSHIOの船旅は、島々の歌声に出会う旅路。各地の歌声から生命の力を授かり、黒潮に渦巻く逞しくも微かな歌声は、SHIO自身の歌になっていく。
観客もSHIOとともに、島々の豊饒な歌の世界にふれることになります。
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【台湾・与那国・済州の歌】
島々は、固有の言葉や方言で豊かな歌を紡いできましたが、その継承すら今では危ぶまれています。
島々の民謡を歌うのは、各島にルーツを持つ歌手や役者。奏でるのは日本、韓国、台湾の最前衛のミュージシャンです。韓国の伽耶琴(カヤグム)、太鼓、台湾からは笙、小笠原の太鼓、西洋楽器のアンサンブル。方々の島々から、名も知れぬ架空の島に漂流物のように集まった島人を、音楽詩劇研究所の個性的なパフォーマーたちが演じます。
■タイヤル族に出自を持つエリ・リャオが歌う台湾原住民族の民謡は、南洋へと果てしなく広がるオーストロネシア歌唱の原型とも。山海の滋養を吸い上げたスピリチュアルな古謡だけでなく、日本語も含む多様な言語の影響が交じり合って生まれたクレオール歌謡が耳に懐かしく響きます。
■東盛あいかが歌う、日本最西端の与那国島の民謡は、沖縄や八重山の歌とも趣を異にし、より南洋の記憶を留める。生と死の境を往来する風葬の慣習に基づく葬礼歌、隣島でも通じない与那国語で歌われる素朴な労働歌や子守唄、年中行事や祭の音は、人の暮らしに根差す歌の原初を思わせます。
■ムン・ソクポムが歌う済州民謡は、火山島を吹きぬける風のごとく逞しく優しい。幻の島を求める海女の歌声にもその気質は顕著で、パンソリや農楽など陸地の伝統音楽との違いが見てとれる。それを紡ぐ済州語も半島の言葉とは異なり、日本における沖縄語にも喩えられます。島民無差別虐殺事件を描いた『別れを告げない』(ハン・ガン)の訳者・斎藤真理子は両島の歴史的悲劇を重ね合わせ、済州語を沖縄語に翻訳したといいます。
言語は異なれど、各島の歌声には、共通する何かがあります。それは漂流による、無数の漂着がもたらした歴史に残らぬ海上の交流こそが育んだのでしょうか。
SHIOを導くのは歌だけではありません。たどり着いた各島で、どこからともなく現れる奇妙な老人が語る漂流にまつわる【不思議な伝説=異聞】に引き寄せられ、彼女はさらに海を渡ります。
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【異聞と史実が織りなす黒潮綺譚】
たとえば済州島民謡で最もよく知られる「オドルトギ」は、対馬海流、黒潮を南下し、琉球やベトナムにもまつわる綺譚めいた【異聞】を持ちます。
【異聞】が伝えるのは、歴史に残されなかった人々の営みの痕跡。たとえば、固有の文字を持たず歌うことで記憶を継いできた人々が、強要された言語や文字を使用して生きる戸惑い。あるいは、異郷の港で空爆を受け、海に沈んだ女性たち。
歴史の闇に長らく沈黙を強いられた史実は、「小さな声」で語り始められます。
それは国家分裂の狭間で葬られ、離散を強いられた人々の魂……
海は人々を遠ざけ、人々を繋ぎます。方々からたどり着いた無数の漂着物のように浜辺に留まったり、また潮の流れに乗ってどこかへと漂ったり。
社会では国境線をたよりに、国家間の利害に基づき、物事が計られ、取引され、政り事が行われます。かつて海上では、歴史に残らない、もっと自由で偶発的な様々な交流があったことでしょう。そこには国家の都合で歴史の闇に葬られた無数の悲劇的な真実も「異聞」として存在するのです。
【SHIO-—The Song of Diaspora】
在日コリアンや沖縄出身者、さらに済州や八重山、先島の小さな島や、古来の生活形態を失った台湾諸原住民の人々は、歴史の渦の中で離散を繰り返し、異郷から故郷と対話し続けてきた。
言葉や故郷から引きはがされたディアスポラの生のあり様が、現在の日本に生きる私たちと分かちがたく繋がっているという事実が、異聞と史実を織り合わせながら、歌い、語られます。
私たちは誰しもルーツを辿れば必ず「外来者」だったのではないでしょうか。その記憶と眼差しに気づいたのであれば、私たちは分断を安易な排除へとつなげることはないはずです。
それだけではなく、精神の故郷を失って、孤独に都市を漂流する現代のわたしたちは、みな「ディアスポラ」といえるのかもしれません。
海の島々を漂流する女性とともに、ディアスポラの魂から学び知る旅路=ユーラシアンオペラ『黒潮の子』にご期待ください。
不思議な異聞や各地の民謡から力を授かったSHIOは、どこへと向かっていくのでしょうか?
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音楽詩劇研究所主催
国際交流基金 2024年度舞台芸術国際共同制作事業
黒潮プロジェクト 台湾─与那国─済州
第一部:「そして魂と踊れ」
演出・作曲:チョン・ウォンキ
第二部:ユーラシアンオペラ Op.4「黒潮の子」
演出・作曲:河崎純
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【沖縄公演】
2024年12月7日(土) 18:00開演
2024年12月8日(日) 13:30開演|17:30開演
*開場は開演の30分前 *全席自由
一般:前売 3,000円 当日 3,500円
学生:前売 1,500円 当日 2,000円(要学生証提示)
会場:てんぶす那覇 テンブスホール
https://tenbusukan.jp/hall.html
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【東京公演】
2024年12月10日(火) 19:00開演
2024年12月11日(水) 14:00開演|18:00開演
*開場は開演の30分前 *全席自由
一般:前売 4,000円 当日 4,500円
学生:前売 2,000円 当日 2,500円(要学生証提示)
会場:日暮里サニーホール
https://www.sunny-move.jp/sunny
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出演:東盛あいか(俳優) エリ・リャオ(歌手) ムン・ソクポム(済州島民謡)
山田有浩(舞踏) 三浦宏予(ダンス) 亞弥(舞踏) 吉松章(舞・謡)
坪井聡志(歌) 上田惠利加(コーラス)
演奏:チャン・ジェヒョ(打楽器) パク・スナ(伽耶琴) リ・リーチン(中国笙)
小沢あき(ギター) 河崎純(コントラバス) 任炅娥(チェロ) 荒井康太(打楽器)
今本晶子(フルート/沖縄公演) 金野紗綾香(フルート/東京公演)
映像・美術監督:三行英登 舞台美術:鄭梨愛 映像:高山剛
主催:(一社)音楽詩劇研究所
共催:(独)国際交流基金
共同制作:(一社)音楽詩劇研究所 (独)国際交流基金
制作:(一社)音楽詩劇研究所 斎藤朋[(株)マルメロ]
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【チケットご予約】
・イープラス https://eplus.jp/sf/word/0000167382
・ カルテット・オンライン
沖縄公演 https://www.quartet-online.net/ticket/mbuh7ct
東京公演 https://www.quartet-online.net/ticket/gvv2ad4
・マルメロ(メール) [email protected]
【お問い合わせ】
音楽詩劇研究所 [email protected]
《プロフィール》
■音楽詩劇研究所
河崎純作曲・演出による公演やワークショップなど国内外で活動を埼玉県を拠点に、日本、世界各地で展開する。日本だけなく世界各地の芸能やフォークロアを遡りつつ、多言語が響きあう音楽劇を創作。独自の合唱システムと即興表現を駆使し、国境を越えるコラボレーションから生まれる作品は、〈北東アジア版マジックリアリズム〉とも称される。2016年から「ユーラシアンオペラプロジェクト」を開始し、これまでに三作品を上演。前作『A Night The Sky was Full of Crazy Stars』(2022)では、韓国伝統音楽「正歌」の歌手と台湾原住民の出自を持つ歌手をソリストに、異郷の地で民謡を伝承する在日クルド人の歌や打楽器を交えて、共生空間としての「広場」の創成を試みた。
https://musicpoeticdrama.com
■河崎純 演出・作曲・脚本・コントラバス
1975年生まれ。在学中よりベーシストとして活動を開始し、主に舞台作品の音楽監督、構成、委嘱作品の作曲を行う。演劇・ダンス・音楽劇、実験的なパフォーマンスを中心にこれまで110作以上の舞台作品の音楽監督、作曲、演奏を手掛けた。近年は特にドイツ、トルコ、ロシア方面での様々なプロジェクトに主要メンバーとして参加。2015年より音楽詩劇研究所主宰。2022年は著書『ユーラシアの歌―異郷と原郷の旅』(ぶなのもり)、韓国、ロシアの歌手を擁する二作の作曲作品CD「HOMELANDS」「STRANGELANDS」(Bishop Records)を発表。
https://www.biologiamusic.com/
■チョン・ウォンキ 演出・作曲
済州島を拠点にフィールドワークを行い、歌を通して個人と共同体の生活の記憶をとらえる。人々の生活を包括する人類の遺産の価値に焦点を当てる中で、ディアスポラに関心を寄せてきた。『浄化×舞楽』『反響×拍子』『ポストメモリー』などミクストメディアによるシアターピースを発表。韓国の次世代の芸術の旗手として期待を集めており、2023・2024年の「済州4.3前夜祭」で音楽監督・作曲を担当したミュージカルは、済州4.3の人民蜂起の代表作として高い評価を受けた。現在は、在日コリアンの人生に深い関心を寄せ、朝鮮半島の分断の現実にも着目した新たな活動も展開するほか、オルタナティブロックバンドPUNK DAZEの活動でも注目されている。
出演者プロフィールはこちら
https://musicpoeticdrama.com/projects_2024_kuroshio_2.html
【ホームページ】
2024年度 舞台芸術国際共同制作紹介ページ
https://www.jpf.go.jp/j/project/culture/perform/creation/2024/index.html
音楽詩劇研究所ホームページ
https://musicpoeticdrama.com/
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Event Venue & Nearby Stays
日暮里サニーホール, 東京都荒川区東日暮里5丁目50−5,Arakawa, Taito City, Japan
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